田中 亜希子(中目黒ステーション・管理者)
これまでは大学病院のCCU等、主に循環器の急性期を経験してきました。急性期では、命が燃え尽きるまで積極的に治療をする患者さんが多く、治療の甲斐なく痛々しい姿で亡くなったり、命は助かっても今度は自宅に帰ることができなくなってしまった方がたくさんいらっしゃいました。これがベストだったのだろうか、QOLを優先して自宅に帰る道もあったのではないか、と考えさせられる場面が多くありました。
また術後管理では、退院指導や退院調整によってはご自宅への退院を目指せるのではないかというケースも多く、次第に訪問看護に興味を持つようになりました。
数回の転職の合間に、バックパッカーとして海外旅行をしました。海外では日本のような医療保険の制度が乏しいこともあり、治療優先ではなく、いかに文化的な生活や人生を楽しむか、どう生きてどう死ぬか、ということが重要視されていて、もともと自分の持っていた死生観とつながるものがありました。
帰国後は、派遣会社に登録をしてデイサービス、訪問入浴、グループホーム等で働く機会を得ました。QOLに重きをおいたケアをする中で、やはり医療の知識だけではなく在宅の知識をもつ必要性を感じ、在宅でのナチュラルな生き方や看取りを支えたいと思い、訪問看護にチャレンジすることにしました。
また、大学病院では拘束時間が長く、プライベートを削って論文を作成する等、ワークライフバランスがとれていたとは言えませんでした。プライベートも大事にしたい、その気持ちが強かったことも、訪問看護を選択した理由の一つです。
はじめは病院での看護との違いにとても戸惑いました。訪問看護では、看護師としての医療的知識やスキルはもちろんですが、細やかな気配りやご利用者のニーズを上手に引き出すコミュニケーション能力がより一層求められます。また、そのご家庭で大事にしている価値観を、私たちも同じように大事にする姿勢が重要だと考えています。
無力感を感じたこともたくさんあります。アドヒアランスが悪く治療上の指示が守れないご利用者への訪問では、なかなか行動変容につなげることができず、ご家族とともに悩みました。訪問看護として何もできていないな…と感じていた時、ご家族が「こうして来てくれて、私の愚痴を聞いてくれる。それだけで救われているのよ」と言ってくださいました。
看護って、こういう形もあるんだな、行動変容させることが全てではない、と肩の力が抜けたとともに、ご利用者だけではなくご家族も看護の対象である、それを改めて実感しました。これから訪問看護にチャレンジする方には、私が感じた病院での看護との違いや戸惑いを分かりやすく伝えてあげられたらと思っています。
就職して半年足らずで、管理者に就任しました。大学病院では大きなシステムの中で働いていたこともあり、計画を立てて効率的に進めることや、みんなが分かるようにマニュアル化することが比較的得意でした。またワークライフバランスを大切に、若い看護師でも就職しやすい職場環境にしたいという思いもあり、管理者をやってみることにしました。
スタッフの時とは視点が変わり、目の前のご利用者だけではなく、CMをはじめ他職種・医療機関との関係性、目黒区という地域をより意識するようになりました。
スタッフに対しては、管理者としての自分の言動が及ぼす影響について注意を払うようになり、働きやすい雰囲気を率先して作っていく立場になったことを実感しています。「こうだ!」と思っても、必ずみんなの意見を聞いて、個人ではなくチームとして考える・動くということを大切にしています。
まだまだ新任管理者ですが、スタッフが学びたいことを学べるようサポートしていきたいと思っています。例えば、訪問看護ではどうしても病院に比べて医療処置が少ないので、医療的な学びの機会が減ることに焦りを感じる方もいると思います。医療依存度の高いご利用者も積極的に受け入れて経験値を上げていくことはもちろん、外部の研修に参加できる機会を確保する等の考慮をしてあげたいです。
スタッフがチームワークを通してお互いを高め合い、長く勤めてもらえるような職場環境にしていきたいですし、それがご利用者にとってもいいことだと思っています。
ステーションとしては、循環器での経験を活かして、将来的には重症心不全や補助人工心臓(VAD)をつけた方等、専門的な管理が必要なご利用者の在宅生活を支えられる存在になりたいと思っています。
8:45~
朝礼、スタッフ会議(ご利用者の状態なども報告しあう)
9:30~
ご利用者宅 1~2件訪問(カテーテル・バイタルチェック、在宅酸素・人工呼吸器などの管理、注射や点滴など)
12:00~13:00
昼食(スタッフと雑談しながら)
13:00~16:00
訪問1~2件(カテーテル・バイタルチェック、在宅酸素・人工呼吸器などの管理、注射や点滴など)
16:00~17:45
本部との連携・報告、ご利用者の記録、他部署との連携・報告